事件の概要
05年10月18日、神戸市内の質店、タバコ店などを経営していた男性が、店舗内で殺害され、翌日遺体が発見されました。被害者は頭を鈍器で少なくとも28回殴打され、頭蓋骨粉砕骨折をともなう脳挫(ざ)傷(しょう)により殺害されており、現金1万円余りが奪われていました。1年10カ月後の07年8月、神戸市で電気通信設備工を営んでいた緒方秀彦さんがスピード違反で指紋を採取され、その指紋が質店の店舗内に残っていた指紋と一致したとして、事件当時「不審者」を目撃した人に面割りをおこなったのち、9月に強盗殺人の罪で逮捕されました。緒方さんは一貫して無実を訴えています。
■裁判の経過
検察は、店舗内に残っていた指紋のほか、緒方さんとDNA型が一致するタバコの吸殻があったこと、緒方さん宅から押収された靴と一致する靴跡が発見されていること、犯行があったとされる夜、店舗前の路上で不審者を見たという目撃証人が、緒方さんと似ていると言っていることから緒方さんを起訴しました。
一審の神戸地裁(岡田信裁判長)は08年6月、緒方さんに無罪を言い渡しました。判決では、緒方さんは以前、この店舗に防犯カメラの取り付けの相談を受けて立ち入り、タバコとビールをごちそうになったと証言しており、店内の遺留物はその主張と矛盾しないこと、目撃者の面割りは警察官に誘導された可能性があることなどを指摘し、自白もなく、凶器もなく緒方さんと犯行を結び付ける証拠はないとしました。
しかし、二審の大阪高裁(小倉正三裁判長)は09年9月、検察側の主張を受け入れて、全く同じ証拠について正反対の評価をし、緒方さんが金品の強取の目的で被害者を殺害したと認定し、無期懲役の逆転有罪判決を言い渡しました。
■緒方さんは無実
しかし、緒方さんを有罪にするには多くの疑問が残されています。
まず、不審者の目撃証人は、髪型は「スポーツ刈り」、服は「黒っぽいスポーツウェア」だったと一貫して証言しています。しかし、緒方さんは「縮れ毛で、額に垂れた」髪型で、服装も営業を装ってで店舗内に入った可能性(二審判決)を考えるのであれば「薄緑色の作業着」となります。加えて、目撃者も「目は似ているが髪形は違う」ことを繰り返し供述しています。
次に、現場の状況も緒方さんの無実を証明しています。被害者はベッドに血溜まりを作って大量に出血しており、店内の壁や天井には多数の血痕があり、血液が付着した手で電話機に触った痕跡などが発見されました。このことから、犯人の体や着衣などには多量の血液が付着していたと考えられます。それにもかかわらず、現場に残されていた緒方さんの指紋や犯行当時履いていたとされる靴などからは、血液反応が一切検出されていません。そもそも、犯行の際に使った靴を1年10カ月も所持していることや現場にタバコの吸殻や指紋などを無造作に残していくこと自体が不自然で、防犯カメラの設置などを業務とする緒方さんが、計画的に犯行をおこなったとするのは不合理です。
また、緒方さんは、被害者から相談を受けた際、ビールの空き缶を捨てるように頼まれ、ゴミ箱に捨てて帰ったことなどを証言しています。証言の通り、部屋からは空き缶が発見されておらず、タバコの本数や銘柄も矛盾なく、信用できる証言です。
一審の無罪判決では、事件後の店内からは借用書の類が一切発見されず、さらに頭蓋骨が粉砕する凄惨な殺され方をしていることなどから見ても、現金目当ての殺害とは矛盾することも指摘されました。
緒方さんは今年、無期懲役が確定し、岡山刑務所から無実を訴え、再審請求をめざしています。家族も高齢の身を押してたたかっています。緒方さんは、事件とは無関係です。
守る会の連絡先/署名等
【激励先】
〒701-2141 岡山市北区牟佐765 岡山刑務所 緒方秀彦様
※刑務所名は書かなくても届きます
【連絡先】
国民救援会兵庫県本部 〒650-0022 神戸市中央区元町通6-6-12 山本ビル